マイケル・シャオワナーサイ
Michael Shaowanasai
2003/11/4

「アイアンプッシーの冒険」について
モンドでカルトなエンターテイメント・ムービー「アイアン・プッシーの冒険」を主演で共同監督のマイケルが語る。

『アイアン・プッシーの大冒険』
監督・主演 マイケル・シャオワナーサイ インタビュー

マイケル・シャオワナーサイ:1964年、フィラデルフィア生まれ。多分野にわたる活動をするタイ人アーティスト。パフォーマンスやインスタレーション、写真のほか映像作品を数多く発表。アート・ビデオとして99年から「アイアン・プッシー」シリーズに着手。タイ本国や国際的なカルト作品として評判に。


Q:今回、東京国際映画祭の"アジアの風"部門で上映されたこの作品は、観客から熱烈な支持を受けたと思います。この映画祭での初日の上映に、私も参加したのですが、映画祭という場でも、なかなか感情を表に出さない日本人観客が、スタンディング・オベーションまでして意思表示しました。そのことを、どう思われますか?

とっても、素晴らしいこと!!すっごくハッピーに感じたわっ。
どの国の観客であれ、私自身のクリエーションを楽しんでくれれば、私はすっごくハッピー!東京に着いた初日、この作品の上映があるなんて知らなかったから、もうびっくりよ。上映終了の15分前くらいに会場に着いたんだけど、観客は私に気付いて、オベーションしてくれたの。それは素晴らしくハッピーなことだったわ!私がアクターもしくはアクトレスだからでなく、私自身のクリエーションである作品にオベーションをくれたことが、とても嬉しかったわ〜。

Q:日本は、今回、何回目の来日ですか?

はっきりしないけど、4、5回目かしらね。でも東京は2回しか来たことがないの。いつもはだいたい大阪に行くのよ。大阪にはグッドフレンドがいるからね。それから北海道にも行ったことがあるのよ。アイアンプッシーの脚本を書いてる時も北海道にいたわ。

Q:夕張ですか?

そうじゃなくて、札幌の美術展に参加してたの。3ヶ月くらい居たんだけど、その間に脚本を書いたのよ。

Q:去年の末から今年にかけて行われた現代美術展(Under Constraction)では、ア−ティストとして、今回は映画監督兼主演として来られました。あなたは以前からビデオ作品で、"アイアン・プッシー"というキャラクターを創造して芸術活動をされていますが、今回、映画という形で公開されるということで、何か関わり方の違いはありましたか?

ふーん、違いってのは・・・。まずあんたたちは見る人達たちが違うって事を理解しなければならないわね。アーティストとして私を認識してる人が見る、監督や俳優として私を認識してる人が見る、ってことね。自分についていうと、あまり違いはないの。自分は自分にできるものをつくる。Under Constructionのプロジェクトはとても大事なものだったの。新世紀の現代美術を伝えるとても大事な機会。展覧会をマネージメントするキュレーターのお手本みたい展覧会だったわよ。日本は現代カルチャーにいいことをしてきたと思う。ジャパン・ファンデーション(Under constructionの主催)から東京国際映画祭まで、この2つの組織は多様性をサポートしてきたわ。この多様性は自分のしていることでいえば、現代美術と映画。これらは確かに違うのものだけど、私は一つのことしか出来ない人間だからね。私は私のアートを行い、私の映画を撮ることしか出来ない、ってことね。

Q:今迄、ビデオ作品などで"アイアン・プッシー"を発表されてきましたが、今回この映画は、ある種"アイアン・プッシー"というキャラクターの集大成なのでしょうか?

アイアン・プッシーっていうのは・・・。あんた、プッシーって何か知ってる?プッシーは猫ちゃんのこと。小さくてかわいいもの、アイアンは硬くて強いものね。私はデリケートなものに強いものを入れてみたかったの。例えばあんた達二人を見てご覧。あんた達はかわいい小さな女の子、でもすごくストロング!分かる?そういう感じ。
人々は弱いもの、強くなさそうなものを利用したり優越感を感じたりしては駄目なのよ!だから私はそれに強さを与えたの。そういう感じが私は好き。だからこの名前をつけたの。プッシーっていうのは子猫ちゃんのことよ。

Q:一言で言うと"アイアン・プッシー"って、どんなキャラなんでしょう?

アイアン・プッシーっていうのは・・・、そうね、基本的には男で9時から5時まで"セブンイレブン"で店員をしてる普通のサラリーマン。そして、夜になると女装で犯罪に立ち向かうの。なぜなら、戦うべき犯罪があるからよ。悪い人をやっつける、ただそれだけ!プッシーていうのは小猫ちゃんの意味、アイアンは強くて硬いものでしょ?私はデリケートなものに強いものを入れてみたかったの。キャラクターに意外性を入れることはとっても楽しい!タイ映画のゲイキャラクターっていうと、たいていはゲイが美容師や歌手の仕事をしていて、誰も悪と戦わないの。だから、私がやったのよ!

Q:スーパーマンみたいに?

Oh、ノー!全然違うわよ。私はスーパー・パワーは持ってないわっ!スーパーマンはスーパー・パワーを持ってるでしょ?でもアイアン・プッシーはテクニックを持ってるのよ。空手やテコンドーも知ってるし、タイ式ボクシングも出来るの。でも女の格好をしてるでしょ。さっきも言ったけど、キャラクターに予期しないものが入ってることはすごく楽しいの。だからこのキャラを作ったのよ!

Q:そうですか・・・。ところで、あなたは現代アートの分野から出発して、コメディと映画を一体化させました。日本にはコメディから出発して、アートと映画を一体化させた北野武がいます。お二人に共通するのは、コメディの要素だと思います。コミカルな表現は、現代アートよりも映画の方が得意とすると思うのですが、影響を受けた作品や映画監督はいらっしゃいますか?

あっ、まず訂正させて!私がしてるのはモダンアートじゃなく、コンテンポラリーアートよ!それって全然違うものなのよ。ははははは!>

それから、北野に関しては私はちょっとしか知らないの。でも森村泰昌っていうアーティストはよく知ってるわ。彼はコンテンポラリーアートとコメディを一体化したのよ。彼はマリリンモンローの衣装を着たり、オードリー・ヘップバーンの格好をしたり、それとかジョディ・フォスターなんかのね。私のよく知ってる友達なんだけど、あんたたち知ってる?大阪を中心に活動してるアーティスト。彼はいつもとてもばかげた格好をするの。でもそれは対象をからかい、はぐらかすためにやってること。

私について言えば、決してこの映画でコメディを撮ろうとしたんじゃないの。私はカルチャー・オブ・リビング(生活の文化)の常識をからかおうとしたのよ!私は女性に扮するけど、それは誰も知らない女性でしょ?あんまり綺麗だから男が振り向いてしまうってことはあるけれどね(笑)。女が男を演じる宝塚ってのがあるけど、それと同じようなこと。私の場合は男が女を演じる。宝塚って知ってる?それと同じことよ!

あと映画っていうと・・・、特別に私に影響を与えた作品や俳優っていうのは思いつかないね。それより、日本のカルチャーからの影響が大きいの。美輪明弘とか、男が女の格好をする歌舞伎とか、さっきでた宝塚とか・・・。私は自分のインスピレーションをカルチャーから引き出しているのよ。インドの男が女の役をやる劇とか、シェークスピアで若い女が男を演じるのとかね。

Q:この映画の中には西部劇やミュージカル、サイレントやメルヘンチックなメロドラマが登場しましたが、この発想は、あなた自身から出たものですか?共同監督のアピチャートポンとは、どのように役割分担なさったのでしょう?

ノー、これらはアピチャートポンのオリジナルよ!彼がサイレントやミュージカルや冒険劇の融合を考えたのよ。私がしたことは、彼を選んだってこと。私は誰を使えばいいのかを知っていたってことなのよ。そう、私がアピチャートポンを監督に選んだの。この作品は続くけど、主役はいつも私!次の監督は、例えばマーティン・スコセッシにしてみたいわ。次回作は、血まみれの映画になる予定なの。色んな人を撃ちまくる・・・。そう、次回は違った映画になるから、違った監督を使いたのよ。

Q:アピチャートポンは、シカゴの美術学校の後輩のようですが、彼とは、どういう経緯で一緒に映画を撮ることになったのですか?

それはすっごく簡単なことよ。彼の作品を知ってたし、彼がどんな人かも知ってたし、私たちは時々連絡も取りあってたの。彼にアイアンプッシーの映画を撮ってもらったらどうかなって、いつも考えていたのよ。とにかく彼を全面的に信頼してたので、彼のやりたいことは全てやってもらったし、おかげですごくいい映画が出来たの。本当のこと言うと、私はタイではなくて、日本ではじめて映画を通しで全部を見たのよ。すご〜く満足いく出来だったわ〜。

Q:日本では、アピチャートポンの作品は、まだ一般公開されていませんが、映画祭などの場で上映されたことがあります。『真昼の不思議な物体』『ブリスフリー・ユアーズ』。これらは実験的な作品(アバンギャルドな展開、内容)だったため、日本の観客はびっくりしたと思います。そして、今回『アイアン・プッシーの冒険』は180℃違う内容だったので、さらに観客は驚いたと思います。アピチャートポンについては、どのように思われますか?

彼はぜ〜んぜん変わってないわよ。彼がどんな映画で観客を驚かせたとしてもね。いわば、アピチャートポンはシェフなの。おいしい料理を作るシェフね。次から次へと皿がでてくるわ。もし日本の観客が『アイアン・プッシー』を『ブリスフリー・ユアーズ』より美味しいと感じたとしても、どちらも彼の料理であることには変わりはないのよ。
結局それは、観客の舌によって違うのね。『ブリスフリー・ユアーズ』はフランスで絶賛されたけど、アメリカでは全然駄目だったわ。『アイアン・プッシー』は日本では受けるかもしれないけど、ヨーロッパでは駄目かもしれない。結局それは見る人の持つテイストによるのよ。
でも一つ言いたいのはチャンスを閉ざさないでほしいってこと!アピチャートポンの作品は素晴らしいのよ。彼は非常に色んなことが出来る優れた才能の持ち主なの。とにかく彼の作品が日本で評価されることはとても嬉しいので、これからも彼の作品を見続けて欲しいわ!

Q:では、今後の展開について、お話いただけますでしょうか?

また映画を撮りたいわね。多分別の監督でね。まだ分かんないけど、アピチャートポンかもしれないわね。
アーティストとしては、今はペインティングの連作と、写真の連作に取り組んでるわ。2004年の春には、なんらかの形で発表したいと思ってる。私は日本に一杯友達がいるし、キュレーターの友だちも多いの。だから次に日本で私の作品を見られるのは、まずアーティストとしてかもしれないわね。ジャパンファウンデーションとか、東京オペラシティとかの展覧会でね。
でもアイアンプッシーは、いつでもどんな形でも生み出すことが出来るの。2分のアートフィルムで実現するかもしれないし、マンガでかもしれない。形に限定されず、どんなことでも可能だから、色んな形で挑戦したいわ。

Q:じゃあ私達は今後、何度でもアイアンプッシーを楽むことが出来るんですね?

イエース!アイアン・プッシーは、いつでも、どんな形でも生み出せるの。次は2分のアートフィルムかもしれないし、マンガかもしれないし、村上(隆)みたいなフィギュアかもしれない。小説だって、写真集だって、何だって出来るわ!だから、どうぞお楽しみにね!!!

Q:最後に少し、バックグラウンドについて、お話いただけませんか?アメリカでお生まれになったんですよね?

そう。私はアメリカ人で両親はタイ人。アメリカのフィラデルフィアで生まれたわ。法律学校に行って弁護士の資格をとったのよ。

Q:えー!

あ〜ら、私はアメリカの銀行で長い間働いていたのよ!
それから文学と写真を学んだわ。ある日、アーティストになろうと思ってシカゴの美術学校に行ったの。卒業してから6年でしょ、だから私はまだ新人なのよ。今39歳だけど、色んなことをしてきたわ。それがすべて役に立ってると思う。

そうだ!UnderConstructionでは、私が女装したモノクロのポスターに観客が落書き出来るってやつ、あったでしょ?何でも書いていいの。このプロジェクトは世界中でやっていて、ベニスのビエンナーレやメルボルンでも開催されたの。今、みんなが落書きしたポスターを集めた本を作ろうと思ってるのよ。世界中の人が何か表現したいことを持っていて、それを書いてもらう手段を与える、しかも私の上にね。バンコク、オーストラリア、東京、ベニスと巡って、5000枚のポスターが集まったのわ。これッて、ホントに素晴らしいことだわ〜!

Q:今後の活躍に期待してますね!!

ありがと。お楽しみにね!!!



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